先日、SharpCapベータ版のアップデート(v4.0.7644.0)がありましたが
プログラムを起動して最初に次のようなダイアログが表示し、下のほうを
よく見ると・・・。
「このベータ版は、次の時点で動作しなくなります。2021年6月1日」と
書いてあります。
以前は「5月1日」と表示してあった事から、あくまでも想定ですが正式
リリース時期は、当初の予定より1か月程遅れそうです?。
先日、SharpCapベータ版のアップデート(v4.0.7644.0)がありましたが
プログラムを起動して最初に次のようなダイアログが表示し、下のほうを
よく見ると・・・。
「このベータ版は、次の時点で動作しなくなります。2021年6月1日」と
書いてあります。
以前は「5月1日」と表示してあった事から、あくまでも想定ですが正式
リリース時期は、当初の予定より1か月程遅れそうです?。
昨年に入手してそのまま使っていなかった、天体撮影ソフト「ステラショット2」を、
とりあえずセットアップのみしてみました。
このソフトを購入した最大理由は、今まで「オールスターポーラーアライメント」
で極軸合わせをしていたのですが、ステラショット2からは新機能として
「スーパー・ポーラー・アライメント」が加わったことで、当方の観測環境が
南側方位に限定されているため、極軸合わせの精度を高めてくれることを期待して
用意しました。
この機能は、星空を撮影しその動きを解析することで、極軸のズレを検出。その後
明るい星を導入して、画面内で中心になるように赤道儀を調整することで、極軸合
わせができます。
まだ他にも新機能はありますが、これからおいおいと使い慣れていきたいと思いま
す。
火星で見たものを地図を表示して比較する、S&Tの 「Mars Profiler」ツール の
使い方備忘録です。
① 左上には日付と時刻が表示され、ルーチンを開いたときには、コンピュータの時計から
判断した現在の時刻に初期化されている。日時を変更して「Calculate using」ボタンをクリ
ックすると、別の時間の結果が表示される。また、次の行のボタンをクリックすると、1日ま
たは1時間単位で時間を戻したり進めたりすることができる。このツールはユニバーサルタイ
ム(UT、グリニッジ標準時と同じ)を採用しており、時刻ボタンの下には、コンピュータの
現在の設定に基づいて、UTとローカルタイムとのオフセットが表示され、手動で時刻を変更
する場合は、観測を行う現地時間に対応したユニバーサルタイムを入力する。
② 右上は、CGによる火星の地図で、火星の主なアルベド(濃淡)の特徴を示している。ル
ーチンを開くと、南が上になっており、北半球のニュートン反射鏡で見られる反転した視界
と一致している。赤丸は、地球に向かって真正面から見た惑星表面の領域を示す。
火星経度の目盛りは、地図の南端に表示される(直視・鏡視)。なお、ここでいう「北」
「南」「東」「西」は天空の方向であり、火星経度が西に向かって大きくなる赤い惑星の表
面上の方向ではない。
③ 時刻ボタンと地図の下には、望遠鏡の視野に合わせて地図の向きを変えるための3つのボ
タンがある。[直視=Direct view] では、天の北を上に、天の東を左にします。デフォルトの
[反転表示=Inverted view]では、南を上に、西を左にします。[ミラー反転=Mirror
reversed]は、北が上、西が左になり、北半球で星を対角線上に置いて使用するカタディオ
プトリック式(ミラーレンズ式)や屈折式の望遠鏡のほとんどの見え方と一致する。
火星は地球と同じ方向に回転している。そのため、望遠鏡で真正面(天の北を上に、東を左
に)から見た場合、時間ごとに火星の表面の模様が左から右に移動する。しかし、多くの天
体望遠鏡は、南を上にして見たり、北を上にして鏡を反転させて見たりしているので、いず
れの場合も、時間の経過とともに赤い惑星の表面の模様が右から左に移動していくように見
える。これは、「+1時間」ボタンを繰り返しクリックすることで確認できる。
火星の1日は24時間37分。つまり、地球の1日23時間56分では、火星は自転を1周していな
いことになる。つまり、24時間間隔で望遠鏡で火星を見ると、少しだけ「逆回転」している
ように見える。これは、「+1日」ボタンを繰り返しクリックすることで確認できる。
④ 画面下部には、地図を作成した日時に対応する火星の明るさや地球からの距離などのデ
ータが表示される。
(a) [見かけの大きさ=Apparent visual magnitude]
(b) [地球からの距離=Distance from Earth]
注):地球と太陽の平均距離を基準とした1天文単位(a.u.)は、1億4,959万8,000km
(9,295万6,000マイル))
(c) [イルミネーション=Illumination]とは、惑星の位相のこと(100%がフル)
(d) [火星の北極の位置角(p.a.)=Position angle of north pole]は、天の北から東に向か
って反時計回りに測る。つまり、p.a.が10°であれば、火星の北極が天の北からやや東に
傾いていることを意味し、p.a.が350°であれば、やや西に傾いていることを意味する。
(e) [角径=Angular diameter]とは、天空で火星がどれだけ大きく見えるかを示すもので、
単位はアークセコンド(1/3600度)
(f) [中心子午線=Central-meridian longitude]は、火星の中心を極から極へと結ぶ想像上の
線の火星の経度。
木星の4つのガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)の軌道上での位置を
調べたい時に役立つ、S&Tの「Jupiter's Moons」ツールの使い方をまとめてみました。
今更なんでかと思われますが、だいぶ前に使っていたのですが年を重ねると使い方を忘れ
てしまっているため、今回備忘録にしました。
※(ツール名の「Moon」は普通は「月」の意ですが、ここの場合「衛星」を意味します、
特にEU圏では、この「Moon」を使っているようです)
① 木星に対するイオ(I)、エウロパ(E)、ガニメデ(G)、カリスト(C)の位置を
示す図。
② 望遠鏡の見え方に合わせて図の向きを変える。
・[Direct view] :天の北を上、天の東を左にしたもの(一般的な星座早見盤)
・[Inverted view ] :南を上に、西を左にしたもの(ニュートン反射鏡)
・[Mirror reversed] :北が上、西が左にしたもの(星空対角線を使用した屈折望遠鏡)
③ ・UT:世界標準時。
・UTからのタイムゾーンオフセット:日本時刻はUTよりも9時間早い。
・[Calculate sing entered date and time]:任意の入力された日付と時刻で計算。
・[Reset to current date & time]:現在の日付と時刻にリセット。
・隣接するボタンで1日、1時間、10分単位で時間を遡ったり進めたりする。
④ 木星の基本データ (画面右から)
・[Magnitude]:見かけの明るさ。
・[Anguler Size]:角直径(秒単位)。
・[Distance]:木星の地球からの距離(天文単位 a.u.)。
・[System Ⅱ longitude]:中心子午線のシステムII経度(約100°にある大赤斑が見える
かどうかの目安)
⑤ 衛星の現象
木星を横切る衛星(またはその影)の通過。
木星の背後にある衛星の掩蔽。
木星の影による衛星の食。
ets.
衛星がどのような状態(位置)にあるかの表。
天文年鑑で調べる手もありますが、このツールで任意の日付と時刻を入力すること
により、観測スケジュールが組める。
【関 連】
「木星の大赤斑の通過時間」を調べるには このサイトページ を参考にして下さい。
前回記事 後段の、実際のADC(大気分散補正器)使用手順をもう少し要約してみました。
(ただし、重複する部分も有ります)
1. この補正器は、焦点比F/Dが10以上の場合にのみ使用できます。そのため、 ほとんどの場合、バーローレンズの後に設置する必要があります。そうしな いと、補正器によって光学収差が発生してしまいます。さらに、前述したよ うに、これによってADCを焦点面に十分に近づけることができます。フィル ターホイールを使用する場合、光路内での位置は重要ではありませんが、 ADCを焦点面から近づけたり遠ざけたりする手段として使用することができ ます。
2. 補正器の調整レバーは、望遠鏡を対象物に向けた後、大気の拡散と逆方向の 拡散を発生させるために、水平方向(ゼロ補正位置)に調整する必要があり ます。レバーの位置は左か右の2つが考えられますが、右方向の分散を発生 させるのは1つの位置だけで、もう1つの位置は逆に大気の分散を増幅させ てしまいます、対角線がない光学構成の場合、レバーは 右に配置しなければなりません。
3. 撮像を予定している場合は、この段階で使用するカメラを取り付けなければ ならない。その後、カメラを使って恒星や惑星に照準を合わせ、通常の撮像 と同様にフォーカサーとコンピューターを使ってフォーカシングを行う。目 視のみの場合は、このステップを省略しても構いません。
4. その後、カメラを取り外し、分散を強調するのに十分な焦点距離の接眼レン ズに交換します。装置の直径(mm単位)の1.5倍の倍率を推奨します。焦 点合わせは、通常の装置(フォーカサーやミラーの移動機構)に触れずに、 アイピースをアイピースホルダーにスライドさせて行わなければなりません 。これは、撮影セッションで使用される構成を保持し、その構成に合わせて 分散の補正を調整できるようにするために重要です。
5. 最後に、ADCの2つのレバーの位置を調整して、分散を補正します。 最後にADCの2つのレバーの位置を調整して分散を補正し、その結果をアイピースで星や惑星に当てて目視でコントロールします。 アイピースで星や惑星を見ながら調整します。注意点は、2つのレバーを 2本のレバーをニュートラル位置に対して左右対称に回転させ、大気拡散と同 方向(垂直方向)に補正するように注意します。
調整中は、惑星の左右に見える赤や青のエッジが徐々に消え、画像が白くク リアになっていきます。少し練習すれば、最適な設定を見つけることは難し くありません。例えば、レバーの回転を過剰に補正して、ゼロ点と同じよう な赤と青のエッジが反対側の手足に出るようにしてから、平均点を決めるの が簡単な方法です。
火星のように赤色が強いために分散が目立たない惑星の場合は、惑星と同じ 高度にある恒星(できれば白色の恒星)でADCを調整するのが簡単です。こ こでは、大気の分散が回折リングに与える影響を明確に見ることができる。 また、木星の場合は、リムの両側に同じ色のものを探すことで、最適な設定 を見つけることができます。この方法では、木星の補正を非常に正確に行う ことができます。
目で見るADCの調整は、目で見ることのできる光の全スペクトルにおける分 散の影響を明確に可視化するために、フィルターなし、またはIRカットフィ ルターを使用して行われます。
ADCを調整する別の方法として、例えば天王星や海王星のような角径の小さ い星や惑星を、紫色のW47(Wratten 47)フィルターを通して撮影する方 法がある。実はこのフィルター、紫の光だけでなく赤外も透過してしまう。 大気拡散は波長によって変化するため、W47フィルターを使えば、可視光 の両端で大気拡散の影響を観察することができるのだ。ADCを使用しない場 合、星のイメージは、紫に見える星と赤外に見える星の2つのエアリーパタ ーンで表現されます。ADCのレバーを左右対称に回転させると、2つの回折 パターンは互いに近づき、最終的には合体する。このとき、ADCの調整と分 散の補正が最適となる。この方法では、人間の目は赤外線に弱いため、デジ タルカメラを使用する必要があります。
紫色の画像をカメラで検出するのは必ずしも容易ではありません。この帯域 では、デジタルセンサーの感度が赤外線に比べて著しく低いからです。更に、紫色の光の中のエアリーディスクはしばし ばぼやけてしまいます。そのため、ADCの調整は、目視による方法よりもカ メラによる方法の方が手間がかかります。しかし、この方法は、目視での調 整が非常に困難な淡い天体に役立つ可能性があります。この方法の効果を最 大限に発揮させるためには、青い色の星(最悪は白)を使うことをお勧めし ます。赤い星だと、青と赤の明るさの差が大きくなりすぎてしまいます。
6. ADCが調整されると、カメラは再び設置され、撮影セッションを開始する ことができます。
7. 夜の間、恒星の高度が上がったり下がったりしたら、定期的にADCの調整( レバーの向きや間隔)を行うことを忘れずに、手順4以降を繰り返してくだ さい。通常、15分に1回程度の再調整で十分です。
8. 調整を助けるために、ADCのうち2つのモデルには目盛りがつ いており、2つのレバーの位置が水平に対して対称かどうかを確認すること ができます。また、目盛りがあることで、惑星の高度に応じた調整を一度に校正することがで きます。
一方、ピエロ-アストロ ADCでは、2つの調整レバーの経路が重なっているため、 ADCの後部に取り付けられた光学アセンブリ全体を回転させる必要がありません 。
惑星シーズンが到来しますが、ここで「大気拡散」について今一度考えてみることにしま
す。
以下の内容は、フランスのアマチュア天文家 Jean-Pierre Prost氏(ジャン-ピエール・プロ
スト)の記事を引用しております。(予め日本語訳で転載許可を得ております)
*******************************************************************
大気拡散とは、地球の大気によって引き起こされる収差で、星からの光線に垂直方向のずれを生じさせるものです。このずれは波長によって異なり、青色の放射線は赤色の放射線よりもずれが大きいため、接眼レンズで観察した物体の片側が赤、もう片側が青の境界線に見えるのです。また、CCDイメージングでは、狭帯域のカラーフィルターを使用しているにもかかわらず、多かれ少なかれ解像度が強く低下します。
大気分散補正器(ADC)は、調整可能なプリズムを用いた光学機器で、この収差を打ち消すことができます。
大気拡散現象
望遠鏡に届くまでには、まず地球の大気を通過しなければなりません。このとき、屈折という現象が働き、水の中に突っ込んだ「折れた」棒のように、放射線を屈折させて作用させる。屈折という現象は、光の伝搬媒体が、準絶対真空の宇宙空間から地上の大気中に変わることで起こる。各媒体は、その伝搬指数nによって特徴づけられる。
これは、この偏差が波長的に均一であれば、イメージング上の問題にはなりません。この場合は、画像のグローバルなシフトが観察されるだけです。残念ながら、大気の指数は波長によって変化します。
大気指数のモデリングは多くの研究の対象となっています。J.C.Owensのものが天文学的に最も広く知られているようですが(特にここを参照)、この研究によって次のような式が導かれました。
・Dsは乾燥空気の密度係数で、次の式で与えられます。
・Dwは水蒸気に関連する密度係数で、次の式で与えられます。
と、次のような仮定のもとで行われます。
・Psは乾燥空気の分圧。Psの値は高度h(メートル)と次の関係があります:Ps = P0 *exp(- h / 7000), P0 = 1013.25 mb
・Pwは水蒸気の分圧。この圧力は、温度t(摂氏)および湿度(%)と次の式で表されます。
計算式に使われる単位は、圧力(ミリバール)、波長(ミクロン)、温度(ケルビン)。
この理論に基づいて、大気指数を放射線の波長の関数としてプロットすることができます。
を、以下のような大気パラメータで設定します。
・t =
15°C
・h =
150 m
・湿度=50
赤よりも青の方が変動が大きい(インデックスの変動の傾きは短波長の方が強い)。そのため、青の層が最もこの現象の影響を受けます。私たち天文学者にとっては、色の層がずれることで、惑星の片側が赤、片側が青の境界線になります。
この現象は、放射線の方向と大気層の法線との間の角度が大きいほど、より重要になります...。仰角の低い対象物では
この問題は、画像処理において、赤、緑、青のレイヤーを再調整することで部分的に解決することができます。干渉フィルターを使用した白黒センサーの場合はRGB合成時に、カラーセンサーの場合はRGB分解/ソフトウェアによる再調整/合成によって解決します。
なぜなら、バンド内の大気拡散が補正されていないからです。この大気拡散は、特に青フィルターの場合、かなりの大きさになります。この帯域内分散は、関連する画像の質を低下させ、一般的なボケと同化させることができます。また、望遠鏡の可能性を最大限に引き出して、白黒センサーで輝度画像を作るのは論外です。例として、上述のモデルを用いて、高度に応じたAstronomikフィルターの効果をシミュレーションしてみましょう。
次の表は、異なる装置の直径と4つのLRVBフィルターについて、分散が使用する望遠鏡の解像度を超える標高の値を示している(ドーエス基準1.02 lambda / Dを使用)。
確かに、ほとんどの場合、乱流のために望遠鏡の解像力を十分に発揮できないことがありますが、これはこの大気拡散現象よりもはるかに重要で制限の多い問題です。しかし、タービュランスの少ない数少ない夜のチャンスを逃すと、分散が大きな要因となり、場合によっては非常に大きな要因となります。さらに、輝度(LRGBの場合)については、高度がかなり高くなると分散が乱れに近いレベルに達し、高度53°で1''アークの分散に達します。このように分散を補正することで、毎晩のようにLRGBをフルに活用することができるようになりました。
惑星観測への応用
前述のグラフを使用すると、木星の場合、最大仰角が約25°(2020年の場合)の場合、赤のバンド内分散は約0.43秒角に達し、これは260mm望遠鏡の解像度に相当することがわかります。この分散は、グリーンでは0.7秒、ブルーでは1.7秒、ルミナンスでは2.7秒に達します。これらの値は特に高く、機器の分解能に関して分散の破壊的な影響をよく示しています。
残念ながら、木星にとって、北半球でのこのような視界不良の状況は2022年まで続きます。下のグラフは、観測緯度がニース(私が観測している場所です!)と同じ場合、2030年までの一晩ごとの最大標高を表しています。
土星の場合、最大仰角が50を超える2026年頃までは、比較的低い仰角にとどまります。
最後に、火星の場合、グラフは次のような形をしています(最大直径を弧秒で表したものをグラフに加えています)。つまり、2029年までは火星の状況はかなり良好であり、その間に5回のオポジションがあり、その間の分散はそれほど大きなものではないはずである。
大気分散補正器(ADC)について
ここ数年の大気拡散現象とその補正方法に関する研究の結果、ガラスプリズムを用いることで、発生する色ずれを一次補正できることがわかりました。残念ながら、大きな波長域で大気と同じ指数プロファイルを持つガラスは存在しない。しかし、いくつかの組み合わせでは、より狭い範囲(一般的には350~900nm)で非常に満足のいく補正を行うことができ、アマチュアの用途には十分すぎるほどです。
プリズムの組み合わせは、主に2種類あります。
同じガラスで作られた逆回転の単純なプリズム(リスリープリズムと呼ばれる)が1組。第1のプリズムは、古典的な方法で光を偏向・分散させ、第2のプリズムは、第1のプリズムとのなす角度に応じて、光を多かれ少なかれ別の方向に戻す役割を果たします。
このソリューションの利点は、2つのプリズムを製造するだけで、逆回転システムを簡単にセットアップできるという非常にシンプルな点にあります。ここでは、そのようなプリズムの例をご紹介します。
しかし、この方式では、0の位置でも光線に横方向のずれが生じるという大きな欠点があります。プリズムの回転調整時には、この特性のために、例えば、撮影・観察対象物が大きく動いてしまいます。そのため、補正器の調整時には、計画的に画像をリフレーミングする必要があります。
アミーチのプリズム1組 この構成は先ほどと似ていますが、単純なプリズムではなく、異なる指数のガラスでカットされた2つのプリズムの集合体を使用しています。
大規模な天文台 (La Silla, Kitt Peak, ...) で使用される補正器では、非常に精密な測定が行われるため、偏差がないことが特に重要となります。
一方、アマチュア市場で提案されている補正器では、システムの製造と使用をシンプルにし、コストを低く抑えるために、リスリープリズムが好まれています。数年前から、一般的に2〜8°の角度を持つプリズムを搭載した、非常に品質の高い様々なモデルが販売されています。
このプリズムの角度について、ちょっとした精密さを持ち合わせています。それは2つの異なる角度になるので、一種の曖昧さです。
・それはプリズムの頂点の角度(下の図の角度α)です。
・または、プリズムの偏角(角度β)です。
両者の関係は、使用するガラスのインデックスと波長によって異なります。一般的には、精度がもたらされない場合は、偏向角βについてです。
数多くあるADCの中でもアストロシステムズホランド(ASH)社製の補正器は、ベータ角4°のプリズム2個が、差動回転とADCの調整を可能にする2つのノブを備えたハウジングに取り付けられています。このADCは複数のコンポーネントに分離可能で、希望する光路に応じてさまざまな実装形態が可能です。
2.5°プリズムを搭載したピエロ・アストロ補正機のMK3バージョン。このバージョンでは、ツマミの代わりに1つのツマミが使われており、従来のツマミ付きADCよりも簡単にプリズム間の距離を調整することができ、水平方向の調整とは無関係です。さらに、このADCの光学的品質は他社製品よりも高く、特にフューズドシリカのプリズムと特殊な反射防止処理により、紫外線まで完全に透過します。また、ADCは分割して使用することもできるので、組み立ての自由度が高まります。
ZWO社のADCは、ASHと同様のデザインで、2°の角度のプリズムを持っています。このADCには、水準器と目盛り付きのクラウンが組み込まれており、局所的な垂直軸の位置をより正確に特定し、分散の完全な補正を得るためにホイールの間隔をより対称にしています。
補正器の分析
以下の分析は、BK7プリズムを使用したADCを対象としていますが、これはピエロ・アストロのMK3を除く、入手可能なADCの大部分に当てはまります。BK7のインデックスは、以下の曲線に沿って波長ごとに変化します。
補正器のリスリープリズムを上述の構成1で配置した場合、2つのプリズムを隔てる任意の角度について、次の図と関連するスネル・デスカルト式が得られる。
この図では、X0Y0Z0三面体は補正機本体に固定されていますが、XYZ0三面体は第1プリズムに固定されているため、X0Y0Z0に対してデルタの角度で回転しています。第2プリズムは角度-デルタだけ逆回転するので、2つのプリズムは角度2 * デルタだけ離れていることになる。
また、出力ベクトルR4の計算は、補正器の興味深い特性を示しています。デルタ角とインデックスnがどのようなものであっても、R4は常に(Y0,Z0)平面上にあり、言い換えれば、X0に沿った成分はゼロです。X0が水平になるように補正機の向きを変えれば、補正機本体を回転させなくても、プリズムを左右対称に回転させることで、大気による垂直方向の分散を補正することができます。
この式により、ある波長に対してプリズムが発生させる偏差値i4を算出することができます。この計算を2つの波長に対して行うことで、補正器によって生じる分散が得られます。
この分散は、大気の分散を補う必要があります。補正器の効率は、焦点面との位置関係やシステムの焦点距離によって異なります。この関係を説明したのが下の図です。
一定の大気拡散がある場合、補正器を焦点面に近づけるほど、補正量が大きくなる(ノブの角度が大きくなる)ことがわかります。
大気拡散と補正器の拡散の関係は以下の通りです。
必要な補正分散 = 大気分散 * ( 焦点距離 / Ladc - 1 )
これらの計算をもとに、プリズムの回転に応じたADCの補正量を示す曲線を描くことができる。
これらの曲線は、以下の前提に基づいています。
・Astronomik
RGBフィルターの帯域幅。
・焦点距離は6600mmです。
・補正器と焦点面との距離は45mmで、かなりタイトにフィットしています。
大気拡散補正装置(ADC)の使用について
予備知識として、ADCは大気分散による色の影響を補正するだけで、眼鏡や接眼レンズ、バーロウのレンズから発生する色収差は補正しないことを覚えておこう。
補正器の効果は、焦点面からの距離によって異なります。大気拡散が一定の場合(したがって、観測対象物の仰角が一定の場合)、補正器が焦点面に近いほど、ADCで行うべき補正は大きくなります。そのため、ADCをできるだけ焦点面に近づけて十分な精度で調整しつつ、補正可能な範囲内で十分な距離を確保することが得策です。
実際には、ADCの実装と使用は、次のような連続したステップで行われます。
1.補正器は、F/D比が10以上とかなり高い場合にのみ使用します。そのため、通常はバーローの後に設置し ます。そうしないと、補正器が非点収差をもたらします。さらに、前述したように、この位置関係により、ADCを焦点面に十分に近づけることができる。フィルターホイールの位置は重要ではありませんが、ここでもADCとの相対的な位置関係を調整して、焦点面から少しでも遠ざけることができます。
2. 補正機の0番の車輪(2つのジョイントホイール)は、大気の拡散と同じ方向の拡散を発生させるために、物体を向けた後、水平に配置する必要があります。左手と右手の2つのポジションがありますが、1つのポジションでは右方向への補正が可能で、もう1つのポジションでは右方向への補正が増幅されます。図2のように、ほとんどの場合、角度の付いていない光学アセンブリを使用する場合は、ノブを右に配置する必要があります。
3. 星の撮影が予定されている場合には、この時点で使用するカメラを設定します。そして、カメラ、アイピースホルダー、コンピューターは、通常の撮影と同じように焦点を合わせます。視覚的な観察であれば、このステップと次のステップは省略できます。
4.その後、カメラを取り外し、分散を明確に識別できる焦点距離を持つ接眼レンズに交換します。 フォーカシングは、通常の装置(接眼レンズホルダーまたはミラートランスレーションシステム)に触れることなく、接眼レンズを接眼レンズホルダーにスライドさせて行います。このステップでは、イメージングセッションで使用される設定を維持し、この構成で分散補正を最適化することができます。
5.このとき、ADCの2つのホイールに作用させて、その効果を接眼レンズで確認しながら、分散を補正する必要があります。ただし、ホイールを水平な軸に対して対称に回転させ、垂直面内、つまり大気の分散と同じ方向に補正するように注意してください。
補正すると、片方の赤い線ともう片方の青い線が徐々に消えていき、画像が白くシャープになるはずです。最適な補正ポイントは目で見て決めるので、少し練習すれば特に難しいことはありません。
方法としては、ツマミを回転させすぎて過剰補正し、0点の時と同じような赤と青のラインを反転させて得て、中間点を決定するという方法が考えられます。
分散があまり目立たない天体(火星のように赤が強い)の場合は、同じ高度にある星(できれば白)にADCをセットした方が簡単です。分散による回折リングの影響をよく見ることができます。
木星の場合は、左右の縁の色を同じにすることでも、最適な設定を見つけることができます。この方法では、この惑星を非常に細かく調整することができます。
目視によるADCの調整は、目に入る光のスペクトル全体に対する分散の影響を明確に可視化するために、フィルターなし、またはIr-Cutフィルターを使用して行われます。
また、ADCを調整する方法として、W47のバイオレットフィルターを使って星や小さな惑星(天王星や海王星など)を撮影する方法があります。確かに、このフィルターは紫外光だけでなく、赤外光も通過させます。しかし、先に説明したように、大気拡散の影響は波長によって異なります。W47フィルターでは、その効果を両端から観察することができます。
ADCで補正しない場合、星の画像は、紫に見える星と赤に見える星の2つのスポットとして表示されます。ADCのホイールを左右対称に回すことで、2つのスポットが合体するまで近づき、この時点でADCの設定と分散補正が最適になります。この方法では、人間の目は赤外線に反応しないため、デジタルカメラを使用する必要があります。
次の図は、このような調整を星で行った場合の例です。
なお、赤外線のゴースト画像は、必ずしもわかりやすいものではありませんので、ご注意ください。そのため、ADCの調整は目視による方法よりも難しくなります。この方法は、光量が少なく、視覚的な調整が非常に困難な天体の場合に使用します。
6. ADCが設定されると、カメラを交換して撮影を開始することができます。
7.撮像した星の高度が上がったり下がったりするのに合わせて、夜のうちに定期的にADCの設定(ホイールの向きや間隔)を調整することも忘れずに、ステップ4から始めます。通常、15分ごとにタッチアップすれば十分です。
調整を容易にするために、補正器のモデルには目盛りがついていることが多く、2つのレバーの位置が水平に対して対称になっているかどうかを確認することができます。なお、ピエロ・アストロADCでは、オプションとして、補正器に取り付ける目盛付きの目盛りを用意しています。目盛りが付いているので、星の高さに応じた調整を一度に行うことができます。下、左からADC ASH、ピエロ・アストロADC、ZWO。
一方、ADC
ASHでは、水平に対応する方向が接眼部の固定ネジに記されているため、水平に合わせることが非常に容易です。ピエロ・アストロ ADCでは、2つのノブのトラバースが重なっているため、ADCの後ろに設置されている光学系全体を回さなくても、水平方向の調整にある程度の余裕を持たせることができます。最後に、ZWOでは水準器が水平位置を示すので、目盛りを見てノブを正しく調整することができます。
以前の記事 フランス出版の「Planetary Astronomy」(惑星天文学)英語版の
翻訳目次一覧(4~6ページ)です。
これからいよいよ本文の翻訳に取りかかりますが、各ページ本文は公開できません。
(アレンジしてあるため、原本とは異なります)